早起きするクリエイター

光、温もり、美しさ。
朝に満ちる、
心地よさを描くために。

大谷 優依/インテリアスタイリスト

インテリアから紡ぎ出す、
ライフスタイルと物語。

インテリアは自分らしいライフスタイルを表現する上で、
家そのものと同じくらい重要な要素になってくる存在だ。
今回はAM6のモデルハウスや広告写真の空間演出を手がけた
インテリアスタイリストの大谷さんに、朝への想いや、
スタイリングの裏側にあるイメージ、
アイテムのセレクトなどについて語っていただいた。

24歳で訪れた運命の出会いと、
人生の転機。

大谷さんはフリーランスのインテリアスタイリスト。雑誌や広告の写真の中で、人の暮らしやストーリーを描いていくクリエイターだ。まずは大谷さんがこの職業に出会うまでの経緯を話してもらった。

大谷 美術大学で建築とインテリアを学んでいましたが、ファッション誌やライフスタイル雑誌の仕事に興味を持つようになって、卒業後は本の文字組をつくったりするエディトリアルデザイナーの仕事に就きました。就職して2年ほど経った頃、あるスタイリストさんが衣・食・住をスタイリングしている本と出会って、ファッション以外にも「スタイリスト」という職業が存在することを知ったんです。すぐにそのスタイリストさんがつくる空間や風景が大好きになっていました。

そこからの大谷さんの行動は迅速で、かつ大胆だった。

大谷 「そのスタイリストさんに弟子入りしたい!」と思って、まず勤めていた会社を辞めました。それからお手紙を送って、直接お会いする機会をいただけることになったんです。でも、スタイリストさんは人気もあって、弟子入りは叶いませんでした。だけど、そのスタイリストさんが「とりあえず、ひとりでやってみたら?」って言ってくださって。その言葉を信じて、何人かのインテリアスタイリストさんをお手伝いしながら仕事を覚えつつ、独立への道を進んでいきました。それが24歳の頃ですね。

その出会い、その言葉が、大谷さんのインテリアスタイリストとして道を開いた。大谷さんは周囲の先輩や仲間に支えられながら、雑誌や広告の世界で活躍の幅を拡げていくことになる。

インテリアを選ぶのではなく、「幸せの瞬間」を描く仕事。

そもそも、インテリアスタイリストとはどんな職業なのだろうか。よく耳にするインテリアコーディネーターとの違いも含めて、大谷さんの普段のお仕事についてうかがってみた。

大谷 インテリアコーディネーターは、実際の住宅や店舗のために家具やカーテンなどのアイテムを選んで仕入れや配置までを行いますが、インテリアスタイリストは、雑誌や広告などで使用する写真の中に、クライアントさんやアートディレクターさん、編集者さんたちがイメージした世界をつくっていきます。

そう語る大谷さんのクリエイティブの源泉はどこにあるのだろうか。

大谷 映画や写真集なども参考にしますが、基本的には自分の体験や生活がイメージの源になっています。スタイリングの目的って、おしゃれに、格好いい空間をつくることじゃなくて、その空間の中にある「幸せの瞬間」を感じてもらうことだと思うんです。特に今回担当させていただいたAM6の様に、実際に人が住んでいる雰囲気を出したいときは、そこに住んでいる人たちを設定して、家族構成や趣味、好みや性格まで、その暮らしを細かくイメージしていきます。

つまり、アイテムのセレクトやコーディネート以上に、空間全体のイメージづくりを大切にする。それが大谷さんのインテリアスタイリングなのだ。

光と温もりに包まれた、
幸福な朝の原風景。

今度は大谷さんに朝という時間について聞いてみた。

大谷 撮影がある日は6時くらいに起きて、とりあえず温かいミルクティーを淹れて飲みます。朝食はフルーツとヨーグルトくらいかな。休日はもう少しゆっくり起きて、近所のカフェに行ったり、パン屋さんで朝食を買ってきたりしてブランチを楽しんでいます。

多忙な毎日を過ごす大谷さんには、朝に対して特別な想いがあるという。

大谷 朝は一番好きな時間です。それが自宅であっても、友だちの家であっても、旅先であっても、幸せなイメージを感じるんです。そのルーツはたぶん実家での生活にあるのかな。カーテンもお布団も、全然おしゃれではないけど、朝日が差し込む窓や、ベッドの中で感じる温もりが、私の朝の原風景になっています。

大谷 それに、朝って空間が一番美しく見える時間だと思うんですよ。仕事の中で、ハウススタジオなどに行く機会も多いんですが、やっぱり朝の光を浴びている空間は素敵だなって思います。

空間演出のプロから見ても、特別な魅力がある「朝」という時間。今、「早起き」をライフスタイルに取り入れている人が増えているのも、この「光」と「温もり」が大きく関係しているのかも知れない。

大好きな朝を表現した、
AM6の世界観。

冒頭でもご紹介したように、AM6の空間演出を手がけている大谷さん。「早起きしたくなる部屋」という、独特なコンセプトをどのように表現してくれたのだろうか。

大谷 センスがよくて、いいものをちゃんと知っていて、都会の中でも植物がある暮らしを楽しんでいて、休日の朝はゆったりとコーヒーを淹れながら自分らしい朝を味わっている・・・・・・そんな人が住んでいる空間をイメージしました。

それはまさに、AM6がデザインした「早起きしたくなる部屋」でのライフスタイルのそのものでもある。

大谷 空間自体がやや男性的でスタイリッシュな印象だったので、ここに女性でも魅力を感じられるようなやわらかさを取り入れています。私自身が大好きな朝をイメージしつつ、ただスタイリッシュなだけじゃない、家でゆったりと過ごしたくなる安心感や温かさが感じられるようにスタイリングしていきました。

なるほど。ただ写真を見ているだけで、朝日の心地よさや、住む人の息づかいが感じられるようなあのスタイリングは、大谷さんの細やかなイメージと、朝への想いから生まれてきたのかも知れない。

※大谷さんがスタイリングを手がけた『AM6:GREEN』の部屋。朝の心地よい光や温もりを感じられる演出が随所に施されている。

まず「自分の好きなもの」を知る。
それがインテリアスタイリングのレシピ。

お気に入りのカフェや、旅先のホテルで素敵な空間に出会い、「こんな雰囲気、ウチでもできないかな」と、再現を試みたものの、なぜかしっくりこない・・・・・・そんな経験は誰しもあるはず。私たちが自分の住まいをセルフ・スタイリングしたいと思ったとき、どんなことに気をつければいいのだろうか。

大谷 大谷 インテリアって、洋服と似ているんですよね。お店で「いいな」って思っても、自分に似合うかは別じゃないですか。実際のお部屋で何と組み合わせるかも考えなきゃいけない。だからこそ、「自分が好きなもの」をしっかり知る必要がありますよね。

なるほど。「コーディネート」という点では、確かにインテリアと洋服との共通点は多い。

大谷 家具は買い換えが難しいので、花や植物の飾り方とか、料理の盛りつけとか、クッションやカーテン、ファブリック・・・・・・小さな部分から、季節毎に着替えていくような感覚で変えていくのもいいかも知れません。

つまり、お部屋のスタイリングは「着替え」が利くパーツから。が基本ということ。

大谷 そのアイテムの裏側にある世界を読み取ることも重要ですよね。国や時代、文化を理解しておけば、テイストを選ぶ基準もはっきりして統一感も出ます。あとは、妥協して安いものをたくさん買うより、じっくりといいものを選ぶ。というのも大事かな。そうやってものを選んでいくうちに、「自分の好きなもの」が見えてくる。そういう基準がある人は服装もお部屋も素敵ですからね。

朝は一番好きな時間です。

それが自宅であっても、友だちの家であっても、旅先であっても。

朝の光と温もりには、幸せなイメージを感じるんです。

大谷 優依さん

インテリアスタイリスト

多摩美術大学インテリア科卒業。雑誌などのエディトリアルデザイナーを経て若干24歳で独立。インテリアスタイリストに。女性誌やライフスタイル誌、広告の世界で様々な空間演出を手がける。また、日々の暮らしや仕事の風景を切り取ったInstagramも人気で、ファンも多い。

PageTop